東京都知事選挙が賑やかになってきた。猪瀬前知事のスキャンダル辞任がなければ、誰も想像だにしなかった展開になっているわけだが、「アベノミクス」効果や数にものをいわせる手法などに危機感を感じつつある段階でもあり、知事選挙という形を借りた「安倍政権」リトマス紙的な意味合いもあるのだろう。
そんな中で細川元首相と小泉元首相とのタッグが一気に脚光を浴びている。私は「森の長城プロジェクト」に関して興味があったので細川さんとは去年、数度お会いしている。食事会の席上「政治から遠ざかっている」といわれながら、裏話などがちょこっと出たりして興味深かったことを覚えている。
細川さんの立候補決意表明を受けたメディアの報道ぶりが一面的になりつつあると感じるので、私なりに「森の長城プロジェクト」をきっかけにして、細川さんが東日本大震災の後の日本がどうあらねばならないのかという思いを抱かれていたのかについてSNSの世界で書くことで応援に代えたい。
メディアでは細川さんについて常に日本新党、連立政権、短命、佐川急便問題、などは報じられるものの、震災後の「森の長城プロジェクト」の活動について語る紙面をなかなか見ることがない。ツイッターでは私は一昨年の6月に大阪での瓦礫焼却に絡んで、数十年先を見越した動きだと紹介している。
たとえば、朝日新聞の今朝の社会面、35面の第2見出し「76歳元首相 政権交代…でも借金問題で辞任」という表現を見て、細川護熙さんのことを知らない世代はどう感じるのだろうか。「20年前の借金問題について説明責任を果たしていない」というメディアは追及の矢を放ち続けていたのか。
今の現場記者にとって、細川護熙という存在がどう映るのか。20年前に政治部記者の主軸、駆け出しだった人がこの20年、どういう人生と記事を送り出し、また社内での立ち位置、価値観が変わってきたのかなど、非常に興味深く論調をチェックしているが、日本新党連立政権時代のことをどれほどご存知なんだろうと思う。
私も20年前は大阪ローカルニュースをMBSで担当していた19年目の年だったし、中央政治のことはどこか距離感があってなかなかピンとこなかったことを思い出す。そこで一冊の本を書棚から引っ張り出してきた。
2010年9月ポット出版から出された「民主党政権への伏流」前田和夫著である。この第1章が「細川護熙の側近として日本新党に新しい政治文化を胚胎」というサブタイがついた金成洋治の章である。(同書11ページから74ページ)熊本県知事時代から中央政界への踏み出し方やその後の流れなど92年から細川さんのもとで動いてきた金成(カンナリ)氏を軸とする部分である。
かなり分厚い書籍だし、政治専門書を扱っている書店くらいしか置いてないかもしれないけれど、細川さんを同時代に「記者」としてじっくり取材した人でも知らない話が出ているかもしれないし、これから政治記者として都知事選挙取材にあたろうという若い記者にはいい参考書になるかもしれない。
さて、宝塚市長選挙の最後の運動日だった去年の4月13日にこう呟いた「今日は「森のプロジェクト チャリティオークション」会場を覗いて森の長城プロジェクト理事長の細川護熙元首相にご挨拶。
http://www.tohokai-charity.com/ 非常に興味がある震災瓦礫を自然に還す運動です」
そして、6月4日には「森の長城プロジェクトのHPです。 http://greatforestwall.com/ 」とも呟いている。被災地によって震災瓦礫の扱いは被災直後から様々な側面があったことを現地取材した人たちや、実際にこの運動に加わった人たち、そして批判的な意見などがあったことは承知しているが、私にはこの「長いスパン」の話が逆に新鮮に響いた。
この財団のHPを確認したら依然細川さんが理事長をされている。細川さんの名前で多くの方たちの共感を得、チャリティも集まり、実際に東日本のあちこちで植樹の動きが広がりつつあるとも聞いている。
「反原発」を旗印にという一面だけで、「引退」したはずの政界にチャレンジという図式しか伝えなくていいのか。「長城プロジェクト」からも、細川さんが、原発のない国を明確に志向することで、この国の未来を「たおやかさ」「しなやかさ」に繋ごうとする気持ちを感じる。