「6月30日付のブログで「緊急発信…中国からの大量生活保護申請に関して」と書かせて頂いた、中国残留孤児で大阪にお住まいのお二人の親族として、多くの方たちが来日以降日にちを置かずに生活保護申請をされた件についての続報です。
大阪市は現在、生活保護行政特別調査プロジェクトチーム(PT)を作り、「貧困ビジネス」などの摘発に繋がる情報を現場から集め、警察など関係各所の協力を得ながら、この制度が持つ様々な問題点を国に訴え続けている折から、今後大きな課題となるのではと感じ、入管の審査に疑問を呈したものです。
健康福祉局では6月24日に入国管理局に対し問い合わせを行いましたが、PTが開かれた29日の時点では回答が届いておらず、集団申請が続いていることに現場から対応に苦慮しているという話を聞き、この事態を緊急発表させて頂きました。
その後、当市職員と入管の担当者との電話で「認定は日本国籍を持つ人の親族という身分に基づくもの」で「許可の取り消しはしない」という入国管理局の見解を受け、1日の記者会見で、法的に基準に合致しているのかなどの疑問を呈しました。
入国審査の際に、「入国を認めない」とする基準であるはずの「生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのあるもの」という基準に合わないのではないかというものです。そして、厚生労働省に報告し、法務省と今回の件について話しあって一定の方向性を出して欲しいと依頼していました。
2日午後、大阪入国管理局の方お二人が大阪市役所に来られ、健康福祉局理事、部長ら5人がお話を聞きました。そして、入管側の対応は既に朝刊各紙などで伝えられていると思いますが、「法務省と協議のうえ、今回の中国国籍の方の集団申請事案に関係する方々の在留資格の調査を改めて行う」という説明でした。
2日の夕方に市政記者クラブでこのことを報告し、「大阪市としては、大阪入国管理局の調査の結果も踏まえ、生活保護の適用についての判断を行いたいと考えています。」と発表したものです。生活保護手続きの関係などからできるだけ早く調査結果の連絡を頂きたいとお願いしました。
私は30日のブログの最後に「単に中国が悪いとか、排他的な動きに繋がることのないよう、是非冷静にこの制度の矛盾や、抜本改正がなされないまま、未だに続いていることも知って頂きたい」と書きました。
残留孤児と認定され、日本国籍を持って生活されている姉妹の親族を認定するに当たっては、当然、入管と中国側での情報交換はなされているでしょうが、そうした親族の滞在が「即生活保護申請」に繋がることに疑問を持ちます。やはりこうした残留孤児の中国籍の親族の方が「身分による入国」を認められた場合には、日本で生活していけるよう支援する仕組みがあるべきだと考えます。
生活保護法自体が憲法25条に依拠する法律であり、その事務を国から自治体が受託して実施します。全てが法的要件を満たしていても、保護決定をするまでには稼働世代に対しては「就労意欲」、「就労支援」など様々な方向性を模索し、自立につながる動きにならなければなりません。
しかし、受給者の多くが高齢化していることや、雇用状況の悪化、窓口の人材不足、他府県の都市から「大阪」へ対象者が送りこまれている事実などに加え、大阪市が全国に呼び掛けて「貧困ビジネス」なるものの実体解明や、不明瞭な医療費の現状に警鐘を鳴らし続けています。
国に対しては、全国知事会、全国市長会の連名で「新たなセーフティネットの提案」を平成18年の秋に出しており、その内容は、今、大阪市が訴えている制度の抜本改革に繋げなければ大変なことになるという方向性と一致しています。私が就任以降、何度も国に対して要望をしていますし、来年度予算要望でも最重点のトップに挙げています。
このリンクに「新たなセーフティネットの提案」の全文と概要版があります。お時間がありましたら、是非ご覧いただきたいと思います。
http://www.mayors.or.jp/rokudantai/teigen/181025safetynet/index.htm